久しぶりである。
いや、この時代の皆にとってみれば、それ程久しぶりというわけでもないのかな。
ふびらいだ。だが、ふびらいと言ってもただのふびらいではなく、単刀直入に言えば「3ヶ月後の未来から来たふびらい」という事になる。
この時間に舞い降りるまでに紆余曲折を経たわけではあるが、今回はそれは省略させて頂く。
さて、3ヶ月後の未来から来たという事は、当然ながら「大魔境ウンゴロ」発売後の環境を先の先まで知っているという事である。
この時代にやってきた後、まず何よりも先に皆の書いた新環境予想の記事やツイートを見させてもらったのだが、ある点では笑い、ある点では頷き、とにかく非常に楽しむことができた。
そこで、新環境を体験済みという全くズル極まりない立場からではあるが、この祭りに参加させてもらおうと考えて筆を取った次第である。
しかし、100種以上もあるカードをイチイチ画像引用の元で評価するのは単純に面倒であるし、未来を知る僕があまりにも事細かに新環境を説明してしまうと、これを読んだ諸君の新弾発売後の行動が大幅に変わり、重大なタイム・パラドックスを引き起こす危険性がある。
そこで今回は新カードの中で最も環境に影響を与えたものを【このカードを信じろ!5選】で紹介し、反対に、この時代では過大評価されていると感じたものを【何が強いの、このカード?3選】で紹介するに留める事とした。
更に最後には【ウンゴロ環境ヒーローランキング】をおまけで搭載した超・お得パックだ。
これはこの時間を生きる皆への、僕からのヒントだと思って見て欲しい。
なお、この時間を生きる僕が、この時間にやってきた僕の姿を見てしまうと、これも重大なタイム・パラドックスを引き起こし、最悪の場合現実改変にまで至る可能性がある。
そのため、彼(この時代の僕)がカブトムシを探しに近所の公園へ出かけている今、この間に、僕は記事を書き上げて去らなければならない。
【このカードを信じろ!5選】
・《ビタータイド・ヒドラ/Bittertide Hydra》
恐らくこのカードには全てのプレイヤーが注目していることだろう。
その期待通り、主に新生「ビーストドルイド」において猛威を振るう事となる。
《練気/Innervate》から突然現れてゲームを破壊するその姿は、かの《フェル・リーヴァー/Fel Reaver》を彷彿とさせる。
ただし、このカードの運用には注意が必要である。
《フェル・リーヴァー/Fel Reaver》のデメリット効果が、ファティーグまで進行しない限りはカード、テンポ、ライフといったアドバンテージに(直接的には)関与しないのに対し、このカードのデメリットはそのままライフ・アドバンテージに直結する。
極端な例を挙げれば、細かいミニオン達との「一対多交換」を行われただけで自分のライフが危険水準に達してしまいかねず、特に同等以上の速さを持つアグロ系統とのダメージレースで不利に陥ってしまう可能性があるのだ。
危ない時は出さなければいいだけ、と言ってしまえば簡単だが、《フェル・リーヴァー/Fel Reaver》と比べて思考停止したまま使用できるカードでないのは明らかである。
・《デビルサウルスの卵/Devilsaur Egg》
最も幅広いシーンで使われる事になるニュートラルカードがコレだ。
《ネルビアンの卵/Nerubian Egg》と比較して、マナコストの面ではやや使い難さが目立つが、「沈黙」効果に乏しい現環境の事を考慮すると五分以上の驚異度とすら言えるかもしれない。
・《恐竜術/Dinomancy》
進化した「ミッドレンジハンター」のデッキパワーを大幅に底上げしたカードだ。「ミッドレンジハンター」を復権させた功績を評価した。
そもそもハンターのヒーローパワーは、フェイスを詰める上ではもちろん非常に強いものの、「フェイスハンター」を運用するのが難しい最近のカードプール内ではどうしても他ヒーローに見劣りしてしまうものだった。
それを、リーチとして運用する道を残しつつ、盤面に触れられるものに出来るこのカードは、2マナ払うのに充分な価値を持っていると言えるだろう。
・《ヴァイルスパイン・スレイヤー/Vilespine Slayer》</spa
今後のローグのデッキは翡翠要素や強盗要素を軸とした「テンポローグ」系統が主流となる。その中にあってまさに、このカードはローグの救世主と呼べる存在だ。
今環境で挑発持ちミニオンが大量に増えた関係で、高速-中速のデッキには、それらのミニオンの除去手段の確保という問題が一生付いて回る事となる。
ローグにも《昏倒/sup》を始め確定除去呪文はあったが、呪文カードの性質上「既に盤面を取った状態」でしか真の強さを発揮できないことから、今一歩テンポ系ローグへの採用率が上がらなかった。
その点、このカードはミニオンであることから、確定除去の役割を保ちつつ盤面の取り合いに参加できる。この差は思いの外大きいものだ。
・《原始の王カリモス/Kalimos, Primal Lord》
「前のターンに手札からエレメンタルを使用した場合」とは、今弾のキー能力だが、コレは理不尽極まりないものだ。
何しろ、相手からは一切干渉できない。
海賊シナジーが鬱陶しければ海賊持ちミニオンを除去すれば良いし、ビーストシナジーが鬱陶しければビースト持ちミニオンを除去すればいいのに対して、エレメンタルシナジーは未然に防ぐ事ができず、発動する効果を指を咥えて眺めている他ないのだ。
その理不尽なエレメンタルの面々の中で、最もカードパワーが高いと思われるシャーマンのレジェンダリーカードを挙げさせてもらった。
発動する「エレメンタルの加護」の内、特に「1/1エレメンタルで盤面を埋め尽くす」効果と「相手ミニオンに全体3ダメージを与える」効果は、一枚で状況をひっくり返すポテンシャルを持っているため非常に強力である。
【何が強いの、このカード?3選】
・《ウェイゲートの開門/Open the Waygate》
大変なロマンを持ったカードなのは疑うべくもないが、残念ながら「強いカード」ではないと言わざるを得ない。
まずは「自分のデッキに入っていなかった呪文を6つ使用する」というクエスト。
確かに今弾においても《始原の秘紋/Primordial Glyph》を始め、相性も使い勝手も良いカードが追加された。また《強盗ログ/Burgly Bully》等という裏技的手段もある。このクエスト達成条件だけを見れば、それ程難しいものでは無いと言えるだろう。
だが、デッキ外からの呪文という事は、当然ゲームプランに組み込みにくいという事でもある。
例えば従来の「フリーズメイジ」のようなゲームプランを転用し、凌ぎきるデッキにする場合。
「デッキ外から呪文を獲得するためのカードを使用する」→「獲得した呪文を使用する」という手順をそれぞれおおよそ6度踏まなければならない訳だが、これと並行して元々のフリーズ系カードで相手の猛攻を凌ぎきるまでの余裕は有るのだろうか?
前環境における「フリーズメイジ」を想像してもらえば分かるだろう。デッキ外からの呪文の内、幾つかはこのゲームプランに組み込めるモノだと仮定しても、答えはNOだ。
また、《時間湾曲/Time Warp》を手に入れてからも問題だ。
そもそもこのクエスト報酬呪文を使うのに5マナ掛かるのだから、マナコストの観点から言うと得しているのはたった5マナということになる。
つまりターンを連続して行うという事を活かそうと思えば、ミニオンの攻撃回数やそれに伴う特殊効果に着目する他ないということ。
しかし、メイジというヒーローが相手の攻撃を捌きながら盤面をも取れるヒーローでないということは明白であるため、必然的にフィニッシュ手段はワンショットキルか、それに準ずる形を採るしかないのだ。
現状のカードプールでは、その条件に合致するのは《魔力の巨人/Arcane Giant》、10歩ほど譲って精々《カバールのクリスタルの運び屋/Kabal Crystal Runner》程度と言った所だろう。
ドロー力に乏しいメイジというヒーローが、これらをしっかりと引き込み、30点削りきることが出来る可能性はどれ程あるのだろうか。。
話が長く、まどろっこしくなってしまったようだ。まとめると
・デッキ外からの呪文を獲得するためのカードを使用する→獲得したカードも使用する。
・デッキ内からも火力呪文、ミニオン等のフィニッシュ手段を引くためドローを進める。
・その間相手の攻撃を凌ぎきる。
と大雑把に分けてもこれだけのミッションを並行する必要が有り、現状、このクエストを使用したデッキで勝つのは現実的でないという事だ。
・《先遣隊長エリーズ/Elise the Trail blazer》
5/5/5という充分なスタッツに加え、デッキの枚数を1枚分増やす。
また、それを引き込めた際には手札が5枚増え、相手側からはそのカードを予測することが極めて困難である。
と考えると、決して弱いことは書いていない。むしろ強い部類だろう。
だが、デッキの枠がシビアな構築の世界においては、「弱いことは書いていない」程度のカードは採用されないのだ。
デッキに一枚カードを混ぜ、ゲーム中にそれを引き込める可能性がどれだけあるのかを考える際には、《白眼/White Eyes》がいい例となってくれる。
このシャーマンのレジェンドカードのスタッツも丁度5/5/5で、発表された当時は騒がれたが、デッキに埋めた5/10/10をなかなか引き込めないと分かると次第に使われなくなっていった。未だ「強いカード」という認識は変わっていないであろうに、である。
《白眼/White Eyes》の方は《祖霊の導き/Ancestral Spirit》を始めシナジーが強固な「コントロールシャーマン」において採用されているが、埋め込むカードがランダムであるこのカードはそういったシナジーも期待できない。
勿論、埋め込んだカードをドローする力の弱いシャーマンのクラスカードと比べるのは厳密に言えば正しくないが、そもそもデッキを掘る力に長けたヒーローは、手札を溢れさせてまでガラクタ混じりの5枚のランダムカードを必要とはしないだろう。
・《ラッカリの生贄/Lakkari Sacrifice》
このカードを使ったデッキも、実戦で運用できる域には到達していない。
現在の、カードを破棄する効果を持つカードは、そのほぼ全てがランダムに捨てる対象を選択するため、カードを6枚捨てるというクエスト遂行を「ゲームを維持したまま」行うのは極めて困難なのである。
そもそも、《魂の炎/Soul Fire》《ドゥームガード/DoomGuard》を始めとするカードの非常に大きな強みの一つは、「手札が一枚も無ければ、使用するマナコストの域を大きく超えるパフォーマンスを実質タダで発揮することができる」と言う点だ。
手札を破棄することを前提とするこのクエストは、その強みを捨てろと言っている。クエストを使用する際に手札を一枚消費するにも関わらず、である。
肝心の、手札を捨てる際のダメージを軽減する側のシナジーカードは、現在のところ3種のみ。これではウォーロックというヒーローが自傷行為をしながら盤面を維持することは出来ない。
【ウンゴロ環境 ヒーローランキング】
1位:ドルイド
環境を低速化しようと開発側がどれだけ試みようとも、環境の速度を定義するアグロデッキというのは出現するものだ。
今環境の場合、その筆頭として相応しいのは「ビーストドルイド」であろう。プレイヤー達は再び《練気/Innervate》への憎しみを募らせていくこととなる。
また、不発揃いだったクエストカードの中にあって想像以上の奮闘を見せた《ジャングルの巨獣たち/Jungle Giants》を擁する「ランプドルイド」も忘れてはいけない。
そして、《騎乗用ラプター/Mounted Raptor》を失った穴を補って余りあるパワーカード、《デビルサウルスの卵/Devilsaur Egg》を手に入れ、《進化の胞子/Evolving Spores》によって更なる爆発力を得た「エッグドルイド」も本格的に環境に頭角を現し始めた。
総合すると、現環境最も使用率が高く、強力なヒーローと言えるのはドルイドで間違いないだろう。
2位:ウォーロック
《デビルサウルスの卵/Devilsaur Egg》《大食のプテロダックス/Ravenous Pterrordax》を中心としてカードパワーとシナジーの両立を成し遂げ、スタン落ちで失ったカードの多さを感じさせずTier1に返り咲いたのが「ミッドレンジズー」である。
クエスト周辺のカードがやや振るわなかったウォーロックだが、このデッキの圧倒的なまでの流行を評価して2位とした。
3位:ウォリアー
やはり環境に蔓延るビートダウンタイプのデッキに対抗するため、幅広く使用されているのが「コントロールウォリアー」だ。
この中には、挑発持ちミニオンを数多く投入して《ファイアプルームの中心で/Fire Plume's Heart》までをも採用しているタイプも存在する。
前環境の覇権デッキの一つであり、スタン落ちによる被害も最小限に留まった「海賊ウォリアー」だが、今弾での数多くの挑発ミニオン追加、武器破壊カードや回復カードの追加により、実装直後は姿を消した。
しかしこれらのメタカードは往々にして対象が消えれば数を減らすものである。そういったメタの循環の中で、このデッキが環境内に浮上してきた回数も一度や二度ではない。やはりデッキパワーは健在といったところであろう。
4位:ハンター
1マナミニオンシナジーを採用したクエスト型のデッキが期待されたハンターだが、予想に反して台頭したのは《恐竜術/Dinomancy》を採用した「ミッドレンジハンター」だ。
更なる盤面奪取力を手に入れ、同速以下のデッキに対しては圧倒的な強さを見せるが、苦手な「ズー」など、環境に多数存在する素速いデッキとの殴り合いで負けてしまう事が多く、Tier1までは登りつめられていない現状である。
5位:シャーマン
デッキパワーは最も高いと思われた「エレメンタルシャーマン」だが、やはり序盤の優秀なミニオンを失った穴は非常に大きく、追加された回復カードでそれを補いきれずに「ビーストドルイド」や「ズー」の圧倒的デッキパワーに押し負ける場面がやや目立つ。
「コントロールシャーマン」に関しては《精霊崩壊/Elemental Destruction》と《溶岩の衝撃/Lava Shock》のセットを失った穴が大きく、これを覆すだけの研究は進んでいない。
6位:ローグ
《隠蔽/Conceal》のスタン落ちにより爆発力を、《墓荒らし/Tomb Pillager》と《アジュア・ドレイク/Azure Drake》のスタン落ちにより安定性をそれぞれ失った従来の「ミラクルローグ」は姿を消した。
代わりに「強盗ローグ」と「翡翠ローグ」は一定の使用率を持つようになった。上位デッキと比べるとややパワー不足感が否めないものの、環境の地雷といったポジションに収まり、常にそれらのデッキを脅かし続けている。
7位:メイジ
前環境で活躍していた「フリーズメイジ」「テンポメイジ」「レノメイジ」といったデッキがそれぞれスタン落ちによる大ダメージを受け、環境から姿を消したが、「シークレットメイジ」が少しずつ追加されてきた秘策シナジーカードを拾い集めるようにしてようやく形を成した。
使用率は高くないが、今後研究や強化の余地はあると考える。
8位:プリースト
クエストを始め断末魔シナジーを数多く手にしたプリーストだが、その中心となる断末魔持ちミニオン自体に小粒なものが多く、上位デッキのカードパワーにどうしても勝てないという状況が続いている。
「ドラゴンプリースト」がスタン落ちによって壊滅的な打撃を受け、それ以外のプリーストはどう足掻いても序盤の盤面の優位を相手に渡してしまうため、プリーストがこの環境で生きていくのは厳しいのかもしれない。
如何だっただろうか。このあとすぐ実装される「大魔境ウンゴロ」皆も是非楽しんでほしい。
僕は都合により、直ぐに元の時間に帰らなければならない。
時間という概念の性質上、読者の皆と僕が今後会うことはないだろうが、この時間の僕によろしく頼む。
彼はしばらく後、ある偉業を成し遂げる事になるのだが、それはまだ、この時間に生きる者は誰も知らない話だ。
では。